1-2.だからこそ届かなかった

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 眠ってしまった愛しい存在の額に、触れるだけのキスを贈る。自分を助けてくれたからじゃなく、ただウィリアム個人を必要としてくれる存在だから愛した。  能力でもなく、外見でもなく、ウィリアムという個性と存在そのものを全身で求められ、誰が逃げられるだろう。  こんなに魅惑的な眼差しと引力の持ち主が、自分を求めてくれた奇跡を知っているから――守りたいと思った。この命のすべてを賭けても、幼い主を支えてやりたい。  窓の外の風がカーテンを揺らした。  腕の中で安らぐエリヤを抱き締めたまま、ウィリアムも紫の瞳を閉じた。    ……Next
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