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ふと思い出すのは、スカイを僕に預けた、車に乗せてくれたあの男の人だった。
あの時、男の体は白と青の斑を肌に塗られていた。余命いくばくもないありさまだった。
連れている猫を『スカイ』と呼び、続けて空をゆびさした。
「空は自由だ」と、「この猫の毛並みは自由の色だ」と、すがすがしい笑顔で僕に告げた。
スカイは僕と同じ病気になっているのは重々承知だったらしい男は僕にスカイを預けて、よろしくとまたからっからの笑顔を見せた。
「そいつといるときっと自由であれる。空を見て、どこかで誰かとつながっていると思える」
去り際の言葉はこんな感じだっただはずだ。
彼は、わかっていた。スカイとも、この世界とも、もうすぐお別れなんだと。僕は知らないふりをしていた。男は生きている。だからどこかで出会える。
出会えるわけない。もういないのだから。
ここの白い色とともに、風で巻き上げられ空に浮かんだ彼を羨ましいと思ったことは何度だってある。
スカイがすり寄ってきた。僕の目に映ったいっぱいの空色をなでる。
「スカイ、君はもしかしてあの男の人と一緒に空にいきたかったんじゃないかって今でも後悔してるよ」
スカイは何も言わず、目を細めてなくだけだった。
僕はしょっぱくなった青色のリンゴをかじって、また一段としょっぱくさせて、かじってを繰り返した。
僕もいつか自由になれるのかな、なんてスカイを見て、心に秘めたナイフをスカイに思いっきり刺した。
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