青い虚感

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 うすぼんやりとかすむ視界に青がにじんでいるのがわかる。それは視界の端からじわじわと侵食していき、僕に襲いかかる。その魔の手が伸びたとき、飛び起きて、猫のスカイを呼ぶ。  スカイは、青い毛並みの猫だ。この世界で唯一生き残っていた猫であり、僕の青い髪とおそろいの色をした、僕といろいろ共通点のある猫だ。そのしなやかな体をなでると、ぐっと伸びをして、黄色い瞳を僕の方へ動かす。目を細め、睨みつけているのを見て「おいおい長居できないのは仕方がないだろ?」と僕はいやいや言う。  今いる部屋は、ミルク色の雪をかき集めて作った。もちろん、僕一人しか今ここにはいないから、一人で作ったテントだ。触ると崩れるし、掘って穴を空けると外界とつながるから、小さな窓が出来上がる。  その白い四角い世界の端に青がぽつんと一滴垂らされていた。  これがコード・ブルー。  危険信号だ。僕は急いでこの家を捨てて次の家を探さなければならない。スカイはこの家が一等気に入っているみたいで、出ていきたくなさそうだったけれど、仕方ない。最後の一匹と最後の一人になっても長く生きていたいのだ。  たとえ一人でも寂しくっても、僕にはスカイがいた。スカイには僕がいる。  ここに来た時同様の持ち物を青いカバンに急いで詰め込む。  平たく作った台はベット。その上にある青い薄い布を詰め込み、食料をありったけ入れる。そのどれも青くしなびているが、ないよりはいい。  家のミルク色をかき集め、口に放り込む。溶けないか試してみるがいつも通り溶けはしない。仕方なくそのまま飲み込んだ。スカイが僕の方をじっと見つめてくるので、家を削り出しミルク色の塊を投げた。くわっと開かれたスカイの口には少し大きかったみたいで、すっぽりと口に収まり噛み切れず、スカイは口に白い塊を挟んだまま、その場を転がる。 「スカイ、ひっかかったな」
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