青い虚感

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 僕はまだ青に染まっていない黒い皮のブーツを脱ぎ、砂浜に足を泳がせてみた。砂浜であるにもかかわらず、冷たい。氷が足裏を突き刺すようだ。  そうして振り返ると、耐久力がないからか砂浜にすぐに青の足跡が点々とつく。右、左、右、左、と足跡が続く。スカイが僕の肩から飛び降りて、点々と僕の足跡をなぞるように青い証をつけていく。青色の毛並みが日光を受けて、滑らかな光を身に宿している。スカイが僕に追いつき、歩くのを邪魔する。一歩踏み出すとその間を通り抜けて足に縋りつき、体を足にすりすりと擦り付ける。 「こら、スカイ。これじゃあ、歩けないだろ」  スカイは喉を震えさせて、しっぽを足にまきつけてくる。  気ままに、僕たちは歩いていた。  横からざざー、と押し寄せてくる透き通る白い筋の波。僕たちに触れないように、避けていく。  と、思ったら大きな波が僕たちを覆って、かぶさる。僕達はあんぐりと口を開けてすべての水をかぶる。手に持っていたブーツは放り投げられ、鞄は砂浜にうちあがる。体を持っていかれそうになるところをふんばる。すると白い砂浜に足首まで埋まっていく。波が引いていくと、バランスを崩して、しりもちをついた。手を地について、後ろに重心を置く。  去っていく波を見守ったら、スカイが僕の足の間でないた。その瞳が金色から青色にかげったのを見逃さない。 「なんだよ、その目」  なんだか哀れで、湿った毛並みを濡れた手でなでた。  僕の白い指は、寒さで震えていた。
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