青い虚感

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 それから、僕とスカイは寒さに凍えながら森の中に進んだ。森といっても、全ての木は真っ白だ。僕の記憶では前はもっと緑黄色があったはずだけれど、今はもう全てが白い。触れるとカラカラ、とガラスのような透き通った葉っぱが鳴る。違う木に触れてみたら、振動で崩れてしまう。そうして残った残骸は砂のように崩れていき、風が吹いて砂はさらっと空気中に消えていく。  気づけば足元も白い砂だ。僕の足跡はくっきり青色に熟れていても、他は色がない。砂浜を離れて、森の中に進んでいるはずなのに一向に進んだ気配はない。いつまでも、どこまでも同じような白い木だけだ。死骸のように佇みその時を待っている。  へっくち  先ほどの海に体を冷やされ、僕はくしゃみをひとつ。  っしゅん  スカイも僕につられてくしゃみはふたつ。  早く暖をとれるような場所に行かなければならない。風邪をひいてしまう。もともとそんなに温かい暖なんて必要ない体だけれど、快適な場所にこしたことはない。鞄の中にマッチはもう用意されているから、あとは薪があればいい。  見たところ木はだいたい死んでいて、使い物にならない。触れると崩れる、ではいけないのだ。ガラスのように透き通っていても、美しくてもそれだけだ。まずは生きていくのが最優先だ。布が必要だ。あとは食料。残っていなければ餓死するだけ。そうしてこの世界とともに消え去るだけ。 「スカイ、何か見つけたかー」  僕は呼びかけるが、なき声一つも返さない。見れば、僕の来た道の途中で寝っ転がり、体を乾かしていた。ぶるぶると体を震わせて、そうして起き上がり毛を逆立たせて、再び寝っ転がる。伸びをして、あくびをする。すると青い毛並みは乾いていく。僕が暖を取る前に、もういつも通りのぬめりのある光を体に宿している。白い世界で彼の体は見えやすい。 「はぁ、スカイはいいよなぁ」  なんて言ったって、彼は猫だ。返事はおろか言葉を紡ぐなんてことはしない。当たり前だ。
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