青い虚感

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 僕はまだ濡れた足を白い砂に埋もれさせる。水を吸って重い服でなんとか歩く。  こういう時、僕は昔を思い出してしまう。  この森も、海も、街も、僕が長時間いた場所は全て青く染まっていった。僕が歩いていた場所は全てだ。僕の髪を見た他の人はよく思はなかった。一部の人は僕のことを知って、受け入れてくれたりもしたが、結局は白い砂にのまれて消えていった。  手から滑り落ちた白い残骸をかき集めることすら虚しかった。僕の青で染めたわけでもないのに、消えていく。受け入れても受け入れずとも、この世界は白になっているさなかだ。その中で僕だけは、僕とスカイだけは特別だ。なぜかは知らないが青に色付けをできる。せめてもの証を残していける。  海に行こうと思い立ち砂浜に出て、今は森にまた戻っている。 「街に出ようかな」  そんな街も、今はもう誰一人として生きてはいないのだろう。  ようやく道が見えて、森を抜けだし、ほっとした。歩道だって先を見つめても、どこまでも乳白色で、そこが車が走っていたのか人が歩く道だったのかも分からない。 「スカイ、ここ、道路かな。それとも歩道かな」  スカイが僕の肩に器用に飛び乗ってきた。眠そうに口を大きく開けて目をうとうとと、閉じかけていた。寝息が頬にあたり、ふんわりと温度が伝ってくる。毛並があたりぬくもりを感じた。 「前にさ、一緒に車に乗ったよな。車で旅してる人に出会ってさ。車で旅してるって、すっごい珍しいよな。て、寝ちゃってるか」  寝言なのか何度かスカイはごろごろと喉をならす。そののどを指でかいてやったらまた大きく満足げな音をならす。鈴よりも濁った音でスカイは喉をならす。  鈴の音色が懐かしくなり、しばらくなでながら歩いた。 「僕の髪を見て、驚いて、でもすぐに受け入れてもらって。燃料探してるっていうから一緒に探してさ。あの時は楽しかった。一緒にはいれないから別れちゃったけど、また会えたらいいな」  街に行くなら、道に沿って歩けばつくはずだ。
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