青い虚感

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 周囲の木がはけてきて、視界があけた時、長方形型の細長い建物が並んだ街々が見えた。 「スカイ、街だ。街に出たよ。スカイ、起きてよ」  僕は濡れたままのブーツをはいて、ぺとぺとと白い道にブーツの足底柄の後をつけて走った。これまで見たことないぐらいの大きな街だった。もしかしたら人間が生きているかもしれない。  吹き抜ける風が服を乾かす。髪をなぜる。肩に乗っていたスカイを起こす。ぱっちりと目を開けたスカイに周囲を見せる。    これはガラス。白い木になる薄い透明な葉っぱではない。本物のガラスだ。とんとんとノックしても全く割れない。久々のガラスで、自身を映す。そのガラスは建物の一階にあり、道の先を見ても、全身が映るほどのガラスが横並びに続いている。ガラス越しに中をのぞくと、白い砂が散っているだけで、人の気配はなさそうだった。 「僕だ」  僕の姿がガラスに写る。  だいたい青年。ちょっと大人びた。  前に僕を見たときは海に入った時だった。うつむいた顔を水面に映していたからよく見えなかった。今はよく見える。  肩にいる猫はスカイ。青空色をしている猫。その横の少しだけ髪が長い青年が僕だ。青い髪をしていて、目も少しだけ青がかっている。前見た時よりも青が濃くなっている。青空色ではなく、昼から夕にかけての濃いめの青に変色している。  コード・ブルー  その病名を、僕は白桃に染まる世界のさなか聞いた。ほろほろと崩れていく世界に、一色だけ生きている色、ブルー。それは、僕の生きているときの、そして死ぬときの色。この青に抱かれて、僕は死ぬのだ。最後には青に侵食され溶けていく。青は生きているようで、長時間その場にいると僕を襲ってくる。だから、僕はその場に長い間い続けてはならない。誰かと一緒にいてはならない。僕の青が誰かを襲うから。その様子は見たことはないけれど、長時間その場にい続けていると、この青が語りかけてくる。じわじわと侵食して、僕を食べようとする。そのたびに飛び起きる。  スカイ。スカイ、どこにいるんだ、スカイ。  僕は叫ぶ。早くそこから逃げなければと、恐ろしさを抱えてスカイとともに出ていく。何度も後ろを振り返った。どんな時だって青は僕の居場所を奪い続けた。例外はなく全て青に変色していく。  スカイに出会わなければ僕はずっとその恐ろしさに震えながら今もどこかをさ迷い歩いていた。
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