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少女が手のひらをゆっくりと胸の前に伸ばす。手のひらが水玉に触れる。少女の背丈の三倍はある、大きな水玉。水玉に触れたときの波紋が、水玉の表面を伝わり広がっていく。
少女が空を見上げる。水玉を通して見える太陽がキラキラと光り、その周りの青空も周りの木々の葉もゆらゆらと幻想的に揺れている。
水玉につけた手のひらを上に向け、水面を思いきり手を跳ね上げる。バシャッという音と共に水玉から水滴が飛び散る。水が太陽の光を浴び、キラキラと少女の上から降ってくる。地面に落ちた水滴は極小さい水玉となって少女の周りを煌めかせている。
その様子を見ていた少女の兄が、声を掛けてきた。
「大切な水玉で遊んじゃダメだよ」
叱るような声ではない。優しい温かい声だ。
「はーい」
少女はもう一度キラキラ光る大きな水玉の中の青空を仰ぎ見た。
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