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「君は君だから。お父さんとは別だよ」
疲れ果てた僕の耳にそういった言葉が入ってきたのは高校二年の夏休み。
クラスメイトたちとキャンプに行ったときだ。
仲間と焚き火を眺めながら、僕は今まで口にしなかった父への愚痴というものをこぼした。
「どうせ僕は親の七光りなんだよ。父さんに勝てないんだ」
そう漏らしたときに「違うよ」と君は言ってくれた。
何が分かる。
僕の悔しさの何が分かる。
「お父さんに追い付こうとしてる君は格好いいよ」
どくんと胸が高鳴った。
まだ半年の付き合いもない彼女はそう言って笑った。
「努力してる君は格好いいよ」
この人なら……。
僕を見てくれるかも知れない。
僕だけを見てくれるかも知れない。
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