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「あの、どこのお店の物かお伺いしてもいいですか?」
「これは、どこの店にも置いていないよ」
「え……? この界街まちにはないお店なんですか」
「いや。この界街に、という意味ではないよ。世界中の何処を探しても、この簪は売ってはいない。これは、俺が作ったものだから」
酷く愛おしそうな、悲しみを滲ませたその表情に、何故か撫子の胸は酷く痛んだ。その苦しみに柳眉を垂らし、無意識に胸元を握りしめながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「貴方が……?」
「ああ。とある人に贈るためにこの簪を作ったんだ」
白檀の簪を見つめながら、黛は訥々と言葉を紡ぐ。
「撫子さんは……どうして此処に来られたんだい」
「それは、貴方を追いかけてきたんです」
「俺の姿なんて……途中で見失った筈。なのに、何故?」
「――ッ!」
「どうして、来てくれたんだい」
ズキッと頭の奥底で、言葉にならない傷みが生まれる。
――頭が、いたい……。それに、心臓も。
鈍痛とは呼べない程の痛みに、思わず眉を寄せる。
「撫子さん?」
「すみません……。ちょっと、頭痛が」
傷みのせいだろうか。黛の貌が、目の前にいる筈なのにはっきりと見ることができなかった。まるで磨り硝子を隔てているかのように、その色彩が霞んで散る。
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