ハジマリの青

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 いじめられたことはあるが、あいにくそのいじめっ子が死んだという話は聞かない。きっとどこかで自分のことなど忘れて毎日を過ごしているのだろう。 「だから面白いなって思ったのだけれど」 「そうか」  それ以外の言葉は出なかった。 「けれど、俺は面白い人間じゃないだろう?」 「どうかしら?でも確かにあなたの青ざめた顔を見て私あなたに興味を持った」  青ねぇ……と少年は思わず口に出してしまった。 「あら、あなたは青が嫌いなの」 「嫌いだよ」  それはもう大嫌いだ。 「俺にはわからない。青と緑の区別がつかない」 「それは信号機の色を青と呼ぶか、緑と呼ぶかの違いということかしら?」  少年はつまらなさそうな顔で首を横に振った。 「俺には青と緑の区別がつかない。同じ色に見える」  彼女はその言葉にきょとんとした表情をした。……冗談を言っているのかと思っているのかもしれない。  けれど違う。  少年に青い色は見えない。  青色の色鉛筆をとってほしいと言われると困ってしまう。青も緑も同じ色に見えるから、仕方なく両方を手に取ってそれを差し出したものだ。  人と見える世界が違う。  高校生にもなれば、もうそれは受け入れることができた。  きっとどこでも転がっているのだ。視点が違えば同じ現象を違う風にとらえてしまう。  人それぞれ。     
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