ハジマリの青

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「その知識だけではダメなのね。あなたは納得がいかないのね。……青が知りたいのね」 「それでは海の色の草木の色も楽しめないな」 「……あなた、臨海学校の時にしきりに海に入っては海水をすくいあげて匂いを嗅いでいなかった?」  そんなことをしたことはあった。  みんなが、「海青いねぇ」と大騒ぎをするものだから、分かりきってはいたけれど、少しでもその青が知りたくて、海水をすくいあげた。 「それに5月だったかしら。あなた、新緑に萌える木を見上げて、葉っぱの匂いを嗅いでいたわ」  おや、と少年は思った。  そんなことを確かにしていた。  まぁ、それは自分の癖のような物で。  色がわからないから、香りを楽しむ。ただの代償行為だ。  けれど……。 「何でそんなことを知っているんだ?」  もう季節は秋も深い。  彼女が指摘した行為をしていたのはたくさんの男に一方的に告白を受けていた頃で、自分なんて彼女に認識もされていないはずなのだが。 「さぁ、どれがいい?そんなことをしている人が奇異に見えたか……。それともそのころからあなたに興味があってあなたを見ていたのか……」 「……」 「どちらにせよ覚えていたくらいには印象的だったのだけど……」  一瞬、少年はありえないほうを想像してしまった。     
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