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ハジマリの青
「私があなたを選んだ理由?そんなの決まっているわ。私が好きだと言ったらあなたが青ざめたからよ」
夕日が指す放課後の教室に付き合いたての学生が二人。そんな映画のワンシーンのような絵になる光景。
けれど、それは見た目だけ。そこで行われているのはラブメイクではない。ただの問答。
「私はね『恋』を知りたかったの。それがどんなものか知りたかったの」
「でも君ならたくさんの人に告白されているんじゃないか?」
美人で有名な彼女に少年は尋ねる。
「そうね。でも、全くドキドキしなかった。恋はドキドキするものだ。そう本に書いてあったけれど、みんな自分がドキドキしてばかり。いつでも赤い顔をしていたわ」
だから、
「違う顔が見たかった。いつも赤い顔で告白されるのはつまらないから、私が告白してみたの」
なんとも不思議な考え方だ。
「それで君はここ1カ月、誰でも彼でも声をかける女になっていたわけか」
その噂はたちまち学校中に知れ渡った。少年は少女のことをまともに知らなかった。だから、友人からのうわさ話で聞いた。
曰く。
男に告白しては、その場で冷めてしまい、少女のほうからごめんなさいしてくると……。
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