3/4
前へ
/18ページ
次へ
「いや、ほらさ……あの、卓也のこと何か話してたかなあと思ってさ」  田郎と卓也は同じ野球部だった。田郎はチームのエースで、野球の実力で言えば天と地の差があったはずだが、二人は幼馴染で、仲が良かった。やはり心配しているのだろう。 「私は……何も聞いていないや。おとうさんが来てたみたいだけど。すぐ帰らされちゃったし」 田郎はそうか、と答えたきり、押し黙ってしまった。相変わらず青い光が彼の周りをゆらゆらと揺れている。行方不明の卓也を心配してのことだろうか。それにしても、彼の光は、不気味な程に力強い。彼にまとわりつく青色は、まるでコップの水に一滴ずつインクを垂らしているように、もやもやと濃くなったり薄くなったりしている。  私は不安になった。これまで出会ってきた青い光を発する人々の多くと比べても、彼の光は異質だった。 ここまで不安な気持ちにさせられたのは、あの日――祖母の最後の見舞いに出かけた日以来であった。  夏休み明けに自殺者が増加すると、ネットニュースにも書かれていた。もしこのまま卓也が見つからなかったら、彼もどこかへ行ってしまうのだろうか。  蒸し暑い程の教室の中だというのに、寒気を感じた。  私は、少し無理をして、明るい声を出してみる。     
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加