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「いや、ほらさ……あの、卓也のこと何か話してたかなあと思ってさ」
田郎と卓也は同じ野球部だった。田郎はチームのエースで、野球の実力で言えば天と地の差があったはずだが、二人は幼馴染で、仲が良かった。やはり心配しているのだろう。
「私は……何も聞いていないや。おとうさんが来てたみたいだけど。すぐ帰らされちゃったし」
田郎はそうか、と答えたきり、押し黙ってしまった。相変わらず青い光が彼の周りをゆらゆらと揺れている。行方不明の卓也を心配してのことだろうか。それにしても、彼の光は、不気味な程に力強い。彼にまとわりつく青色は、まるでコップの水に一滴ずつインクを垂らしているように、もやもやと濃くなったり薄くなったりしている。
私は不安になった。これまで出会ってきた青い光を発する人々の多くと比べても、彼の光は異質だった。
ここまで不安な気持ちにさせられたのは、あの日――祖母の最後の見舞いに出かけた日以来であった。
夏休み明けに自殺者が増加すると、ネットニュースにも書かれていた。もしこのまま卓也が見つからなかったら、彼もどこかへ行ってしまうのだろうか。
蒸し暑い程の教室の中だというのに、寒気を感じた。
私は、少し無理をして、明るい声を出してみる。
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