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 家にいる時から何かが胸につかえている。そういえば、あの時何かを机の中にしまった。一学期の終わりの日に、一体何を残していったのだろう。  私の早とちりならそれでいい。ただそれを確認したいだけだった。  一人悶々としながら校舎を見上げた時、校舎の上で何かが動いた。  屋上だ。屋上に人がいる。  地上にいる報道陣に見られないように姿勢を低くしているようだったが、一瞬だけその顔を確かに瞳でとらえた。そうすると私には、その人影がどんなに遠くても青く強く輝く光源と化した。  田郎だ。  一週間前に会った時よりその光は強い。そして、視える者を挑発するかのようにその色は禍々しく激しく私を照らした。  私の勘は正しかった。ただでさえ不安定だったはずなのに、親友を失くした彼は、きっと――。  事実、彼はあそこにいるのだ。急がなければ。  幸いなことに、この中学校は敷地が広い。その上、報道のバンも正門に集中していて、裏手側は小さな工場の敷地になっていた。工場と校舎の間の柵はそこまで高くはなく、さらにこの日は休日である。     
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