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私は、工場の方へ回り込んだ。思った通り、閑散としている。工場の建物の隣には、狭いがそのまま校舎側へ通り抜けられる隙間がある。私はそこを通り、柵を上るとこっそりと校舎側へ入ることに成功した。そのまま、校舎の裏口の戸から入ろうと思ったが、鍵が閉まっている。
ここまできて、あきらめるわけにもいかず、校舎の廊下に面した窓に一枚一枚手をかけた。学期末の清掃だというのに、不真面目な生徒もいるもので、鍵がかかっていない窓があった。だが今日は感謝する。そこから侵入することに成功した。
おそらく校舎の中に教師も来ているだろう。職員室は避け、階段を上り、自分の教室へと入った。田郎もよく誰にも見つからず屋上まで登れたものだ。
教室に入った。いつも通り、整然と机は並べられており、昨日までと同じだ。だが、休み明けには様子が一変するだろう。
私は田郎の机の中を確認した。彼がしまった封筒は……無かった。
田郎が回収したのだろうか。それなら屋上に行けば、彼に会えるはず。
意を決して、校舎の階段を最上階まで駆け上がると、踊り場のように広くなったスペースに段ボールが積み上げられていて、その奥にドアが一つ。それを抜けると、屋上に入れる。普段は事故を防止する目的で屋上に上ることは禁止されており、私にとってもそこを訪れるのは初めての経験だった。
ドアノブに手をかけた時、背後から日焼けした大きな手が私の口をふさいだ。
「広田、お前なんでここに」
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