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 私の口をふさいだ犯人は、田郎だった。そのまま積みあがった段ボールの陰へと誘導する。  壁を通して、外の音が伝わる。  バラバラバラと聞こえるこの音は、おそらく報道のヘリコプターだ。  彼から発せられる光は、ますます黒みを帯びてジリジリと私の心を照り付けているようだった。押し寄せてくる強烈な不安感を必死にこらえる。  危険を冒してまで、なぜ田郎を追いかけここまで来てしまったのだろう。  かつて駅のホームで出会った女のことを思い出す。私と目を合わせた彼女は、幼い私にどうしてほしかったのだろう。  泣き続ける私をなで続けてくれた祖母は、本当に私の涙の理由を理解していたのだろうか。  青い光が人の死相を表していることを知ったとき、私は自分のこの特性を呪った。その人が本当に死んでしまった時、私にもその一端があるかのように感じてしまう事を恐れていた。だから、これまでは目を背けてこれた。受け流してこれたのだ。  しかし、今回は田郎が現れた――。本当に死ぬかもしれない強い光が。  逃げたかった。  私は私が怖い。青い光が怖い。でもここで逃げたら、これからずっと、逃げ続けることになる。   だから私は、田郎に向き直った。  田郎の瞳に、不安そうな私の姿が映っている。私は私と向き直っている。負けたくなかった。     
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