1/5
前へ
/18ページ
次へ

 教室から足早に離れた私は、職員室の扉の前で息を整えると、ノックをしてから扉を開けた。机が所狭しと並べられた部屋の真ん中に、長机が四角く組み合わされ、会議用に使われている。今はそこに教師たちが座り、何かを話し合っているようだった。 「広田、来たか」  その内の一人、ひょろっとしていて眼鏡をかけた男性――担任の教師が私の姿を見つけて手招きした。  職員室内の視線が、私に集中した。ちなみにこの時眼があった数人の中にも、薄い色の青いオーラをまとう姿を見つけた。 「呼び出して、すまないな。HRになかなか行けなくてな……」  私の後ろの扉から、別の教師が戻ってきた。どうやらHRを開けていないのは私のクラスだけらしい。 「委員長のお前に、簡単にHRを頼みたい。このプリント配るだけでいいから」  担任から紙の束を受け取り、簡単な説明を受ける。  わかりましたと返事をして、教室に戻ろうと振り返ったとき、また別の男が職員室に入ってきた。 「先月から行方不明になっている清水卓也の父です――」  担任は無言で私を見る。早く行け、と訴えかけていた。私は黙って従い、重苦しい雰囲気の職員室から出た。  清水卓也――それはクラスメイト。彼は所属する野球部の最後の大会が終わった一か月前、行方不明になっていた。いなくなる前、彼には、青い光は差していなかったと思う。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加