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 私がその『青』の意味に気が付いたのは、小学3年生の頃だった。  母親に連れられて、祖母が2か月前から入院している病院へ向かった。自宅近くの駅から電車に乗る時、ホームのベンチの前でたたずむ女がいるのに気が付いた。女はうつむいていて、電車は到着しているのに、動く気配はない。  ふと、その女は私の視線に気が付いたのか顔を上げた。  その瞬間、彼女の背後から、まるでスポットライトがあてられたかのように強い光が差していた。そして、まるで水色の絵の具に黒色を足したかのようなどす黒い色をしている。  私はあわてて眼をそらすと、母親の陰に隠れて車内に飛び乗った。  祖母が入院している病院は、駅からずいぶんと遠いところにあった。私と母親を乗せたタクシーは、森の中を進み、小さな湖を乗り越え、山に囲まれた小綺麗な建物に、祖母は入院していた。  その建物は、窓も大きく外の光を取り込み、観葉植物が並ぶ明るい屋内にはクラシック音楽が静かに流れていた。  以前から病院というところでは、他のところと比べて、青い光を帯びる人達が多いように感じていた。     
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