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 職員室から戻った私は、担任から受け取ったプリントを配布し、夏休みの過ごし方等に関する伝言を伝えて、早々に解散した。  クラスの面々は待ちくたびれたという様子で、終わるや否や教室を足早に出ていく。  私も机の横にかけているカバンを取り出し、身支度を始めたところで、教室後方のクラスメイト達の会話が耳に入ってきた。 「――さっき、教室に戻る前に話を聞かれたのよ」 「何の話よ」 「ほら……清水君のこと。どんな子だったかって。今日ガリガリが来るの遅かったのもそれででしょ」  ガリガリとは、あのやせてひょろっとした担任のことである。 「お父さんなんだって、清水君の」  清水卓也が行方不明になって今日で1か月だった。野球部を引退して直後のことだ。休みが一週間続いた時、担任からは「体調不良である」と伝えられていたが、クラスメートのほとんどはそれが動揺を避けるための嘘であることを見抜いていた。休日に警察が校内に来ていることを目撃した生徒がいたことと、卓也の両親が尋常ではないでクラス中の生徒に電話をかけてきた状況から、事態が穏やかではないことは明らかであった。     
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