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酔いに任せて勢いよく語るも、加藤と三笠の笑いが、賞賛なのか嘲笑なのか分からず、酔いがみるみる醒めていった。
所謂、俺がよく聞いているのは、コミックソングというやつで、好き嫌いが別れるものであることは確かだ。音楽はかっこいいもので、笑いを取りにいくものではない。真面目に歌え。そんな冷ややかな意見を浴びせられることだって、当然あるわけで。受け入れられないんじゃないかという一抹の不安があった。
「でも、なんかかっこいいな」
けれど、加藤がぼそりと呟いた言葉が、それをかき消してくれた。
「だろ? そういうのならさ、極端な話、日常の中で思ったことを、共感を煽るように書けばいいと思うんだ。作品を評価する尺度として、共感ってのは、誰もがとっつきやすいだろう」
素人の俺が考えたがばがばの理論だけれど、加藤と三笠は納得してくれた。
「じゃあ、どんな題材にするの?」
首を縦に振った後の喰い気味の質問。お、これはいけそうだと図に乗る俺は、頭の中に降ってきた何の脈絡もない事実の吐露を三笠に返す。
「タンスの角に小指をぶつけたら痛い、だとか」
「あっはは。それウケる」
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