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演奏の音圧もエグくって、ぼろっちいライブハウスの音響設備が、悲鳴を上げている。ちりちりと鳴るノイズが上乗せされたギターの音色が、俺たちの聴覚を奪った。
「うぉおおおおおおい! 加藤! この後打ち上げ行くかぁああああ!?」
「あぁああああ!? 何言ってるか聞こえねえよ!」
「打ち上げだよ! うーちーあーげぇー!」
耳を押さえながら、叫ぶような話し方の山田。デスボイスがうつってしまったのか。なんだかツボに入ってゲラゲラ笑った。
あーあ、腹痛え。
たった三曲でライブハウスを去るのも名残惜しくって、俺たちは血みどろリップグロスのライブを観ることにした。山田はというと、「あんなのロックじゃねえ」と謎の捨てセリフを吐いて去って行った。
バイトで稼いだ金を叩いて割高なドリンクを買って、スタンディングオベーションで跳ね回る群衆の最後列に加わる。
そこは、まさに震源地。
その場にいるだけで、心臓に電極がぶっ刺さって、無理くりに拍動させられているような感覚だった。
人ごみの湿度と熱でじっとり汗ばんで、動悸がする。そこにいるだけで、肉体が生臭くなって、生きているって感じさせられる。沸騰した脳みそを、HISAMIのとがった声がぶち抜いた。
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