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ゆかちゃんがね くれよんをわすれたんだ ぼくがあおいくれよんをかしてあげたら ゆかちゃんはそれであおいきんぎょをかいた せんせいにまちがっているっていわれたけど ぼくはゆかちゃんがだいすきだから とてもすごいってほめた ぼくがてをだしたら ゆかちゃんはそのてをにぎった はずかしかった そつえんしきでゆかちゃんをみていたら あおいきんぎょのえをぼくにくれた 「ん」と おこったようなかおだった  しょうがっこうもおなじクラスで、ほくはいつもゆかちゃんを見ていた。  夏まつりの日、ゆかたを着たゆかちゃんは、目が合うと少し顔を赤くして、 「ん」  と手に持っていた青いかき氷をくれた。  おいしかった。  間接キッスがうれしかった。  中学生になった友香ちゃんはすっかり美人になった。  男子から人気があって友香ちゃんに近づけなくなった。  学校帰りにコンビニでバッタリ会ったら、困ったような顔で、 「ん」  と青いアイスを差し出してきた。  なぜか僕がお金を払った。  高校も同じ学校で、 「腐れ縁だね」  僕が笑うと、照れたような仕草で目を逸らす。  視線を追いかけると、青い空が広がっていた。  青春が始まる予感がした。  文化祭の打ち上げでカラオケボックスに行ったら、隣に友香ちゃんが座っていた。  僕と目を合わせた途端、慌てた仕草で、 「ん」  と青い飲み物が入った飲みかけのグラスを僕に押し付ける。  みんなに冷やかされた友香ちゃんは、顔を真っ赤にして照れながら、 「やめてよー。そんなんじゃないって」  なんて言いながら手足をバタバタさせていた。  受け取ったグラスに口をつけたらお酒だった。  卒業式の日、友香から校舎裏に呼び出された。  青いウエディングドレスを着て、青いバージンロードを歩く友香の姿が目に浮かぶ。  大丈夫。僕たちはきっと幸せになれる。  校舎裏で待っていた友香はそっと僕に手を伸ばし、青いクレヨンを手渡してくれた。  13年前のクレヨン。 「いつも目が会うたびに返さなきゃってずっと思ってたんだ。うん、スッキリした。これで安心して東京に行ける。じゃ、あたし、大学生の彼氏が校門で待ってるから、バイバイ!」  僕は泣きながら家に帰って、ずっと壁に貼ってあった金魚の絵を剥がす。  青い金魚なんて、幼い子供の幻だ。
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