青色イルミネーション

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 端田君計(はしだきみかず)は青いイルミネーションが嫌いだ。  そもそも、嫌いだった。年末年始の冬の始まり、寒さと人恋しさが増す季節に、なぜよりにもよって冷ややかな青色の照明を選択するのか気が知れない。  欧米などではシーズン中、クリスマス市やツリーの電飾に暖色系の光を使っている印象が強い。この国が好んで青い光を使うのは他国との差別化を狙っているのか、それとも青色発光ダイオードを発明したのが日本人だというアピールか?気に入らないだけに、うがった見方までしてしまう。  しかし、君計が青いイルミネーションを嫌いになったのには明確で決定的な理由があり、それは他でもない己の過去の愚行だった。  三年前の、年末である。  君計は当時はまだ連絡を取り合っていた大学時代のゼミ仲間と飲み会をした。集まった懐かしい顔の中に、塩崎笠音(しおざきかさね)の姿もあった。  彼女も勿論、君計と同じゼミの学生だった。大学時代の彼女は他の学生と比べても頭が良く機転が利き、君計も恋をする対象としては見ていなかったが一目置き、同じゼミ生としての好意は持っていた。  久しぶりに大学時代の仲間達の集まりに現れた彼女は、社会人になったせいか、地味で多少野暮ったかった以前より格段に垢抜け、魅力的に見えた。それでも、居酒屋の遠い席で青いワンピースの彼女を見かけ一瞬で恋に落ちてしまったとか、そんなことはなかった。  問題は、飲み会の解散後だった。それぞれの帰路に各々別れていく中、店から駅まで向かう途中、偶然、笠音と君計は二人きりになった。  駅へと続く道がクリスマス仕様のイルミネーションで青く彩られていたのが、間違いの元だった。
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