青色イルミネーション

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 君計は水族館が嫌いだ。  膨大な量の水がガラスで囲われているだなんて、どう考えても危ない。何かの映画ではないが、いつ割れて客が皆水に飲まれてしまうかもわからない。その可能性を論理的に否定されたとしても、水族館の通路を歩くと生理的に圧迫感を感じて仕方ない。実際の水圧が視覚にまで影響を与えるのか、通路を歩く足まで重くなってくる。  巨大なエイやサメが泳ぐ姿にもぞっとする。エイの腹側を見て可愛いなどという人もいるが、君計にはグロテスクなものにしか見えない。サメは、瞳が異常だ。もしサメと五分見つめ合ったら、理性が破壊されてしまうのではないだろうか。  水族館は、笠音と最初のデートで訪れた場所だった。  場所を指定してきたのは笠音で、彼女は陸の生物より海の生物の方が好きだと言っていた。確かに、君計から見て冷静で感情をあまり表に出さない笠音は、暖かい哺乳類より冷たい海に生きる変温動物に印象が近く、彼女がそれらに近しみを感じていても違和感は感じなかった。  薄暗い中を水を通った青い光が揺らめく館内で、やはり彼女は太陽の光の下より美しく見えた。だから今、君計は余計に水族館が嫌いなのだ。
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