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高坂先輩は柔和な笑みに恥じらいを乗せて、そう述べる。
そうだ。
私だけではない。
高坂先輩だって職員用トイレから出てきたのだから、その使用理由は私と同じはず。
同じ仲間――。その結論に至った瞬間、私と高坂先輩の間にあった垣根がなくなったような気がした。
「そうなんですよっ、朝から牛乳たくさん飲んだせいでお腹が痛くなって、でも生徒用トイレでするのは恥ずかしくって、それでここに行き着きました」
「ああ、同じだね。俺もそんな感じ。やっぱり知られるのは恥ずかしいもんね。あいつ今してるぜって思われたくはないよね」
「はい。だからこそずっとできなくて、どうしよーって悩んでいたら、この職員用トイレの存在を友達に教えてもらって」
「俺は最初から知っていたけど、一応教師用ということもあって行きづらくて、でもそんなことも言っていられなくてね。……でもそっか。あのとき七種さんがタンマしたのは、腹痛が原因だったんだね」
「はい、お腹が痛すぎてとてもじゃないけど告白どころじゃなくって、思わずタンマしちゃいました」
「え? 告白?」
「あ」
勢いによってそのまま言ってしまった。
正に痛恨のミス。
得も言われぬ微妙な空気が充満する。
もうこなったら言うっきゃない。
こんな職員用トイレの前で言うつもりはなかったけど、言うっきゃない。
鳴りを潜めていた恥じらいの感情に押しつぶされそうになる前に、私は高坂先輩に告白をしなければいけない。
「あ、あのっ、高坂先輩っ! こんな場所であれなんですけど、あの、私――」
「ちょっと待って七種さん。さきに俺から言わせてほしい」
「え……?」
私の告白を制止する高坂先輩。
その表情は真剣そのもので、でも若干頬を赤らめていて――私はトクンっと鼓動が高鳴るを感じた。
そういえば、高坂先輩はなんで私の苗字を知っていたのだろう。
私は好きになった先輩だから名前を調べたのだけど、高坂先輩はどうしてなのだろう。
今朝、屋上で会ったのが初めてなのに、なぜなのだろう。
それと、高坂先輩も私と同じってどういうことなのだろう。
もしかして朝の占いを見たところから同じってことなのだろうか。
だとしたら占いの最後にあった、『思わぬところで好きな人と出会う可能性大』っていうのは、もしかしたら――。
了
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