初恋は青春の味

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「大丈夫か?」  まるで風鈴のようだ。凛として鼓膜を震わせ、熱気を冷ます涼やかな快音。  暫く閉じていた瞼を開くと白い日差しが視界を眩ます。  閃光のような目眩ましは、振り返ったその先に白球を隠しているような錯覚を見せてくるのだからたまらない。視界を判然とさせる為に瞬きを繰り返しつつ、またしてもフラッシュバックした記憶を振り払った。 「よっ、」 「…高橋?」 「こんなに暑いのに、よくそんなところで寝転がってられるな。」  掌を軽く見せつつ、敬礼未満の挨拶。  日差しを遮る影がぼんやりと浮かび上がり、白い空間から現れたのはクラスメイトだった。手刀を思わせる顔の横に寄せた右手はすぐさま下がり、左肩から下げられたトートバッグの紐に添えられる。  どうしてこんな所にコイツが居るのだろう?  腹筋を使って上半身を起き上がらせ、疑問を抱えたままにベンチの上で胡座をかく。  黒いラインの入った紺色のポロシャツと踝未満のベージュに近い茶色の綿パン。有名な靴ブランドのロゴが入った黒と白のスニーカー。薄い生成り色のトートバッグの紐に僅かにかかる、襟足まで伸びた黒髪。  普段は制服なので違和感はあるが間違いない。  眩い光のせいで後光が差しているように見えた姿も、角度を変えればやはりただのクラスメイトだ。
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