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「しかし、なんだってこんな所に来たかったんだ?ここで手に入るのはお前の好きな金品財宝じゃなくて、道中で無くしちまったもんだけだぞ?」
剣士は後ろをついて回る私にこの度のダンジョン挑戦の核心に触れるが、それは正しい。
なぜなら、ここへ来たいとパーティーのメンバーにお願いしたのは私自身で、彼らはわざわざ付き合ってくれているに過ぎない。
「前のダンジョンで証を無くしたから、どうしても回収したいんだ」
「証?証ってなんの?」
「は?お前・・・それも覚えていないのか?」
私は耳を疑ったが、不思議そうに「何のことだ?」と聞き返す剣士の顔を見て理解した。
覚えていないんじゃない。知らないんだ。
「いや。忘れてくれ。まぁ、特別高価な物だから取り戻したいだけだ」
「ほー・・・。やっぱ盗賊ってのはがめついねぇ」
「うるさい。そんなことよりこれが件の無くしたアイテムが宿る宝箱だ」
剣士の軽口を適当に受け流して私が一つの宝箱を指すと、魔法使いは殊更興味なさげに宝箱を手に持った杖でツンツン叩いた。
「あら、案外普通なのね。もっとこじゃれたものかと思ったわ」
「突くのはやめてくれ。中に入ってるものはとっても貴重なものなんだ」
私が魔法使いをジロリと睨みつけると、彼女は「やーん。こわーい」と何の反省も感じさせない口調で剣士の後ろに隠れた。
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