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「夏が死んでく前に、なんか記念になることないかなー」
七緒はそれでもまだ高い気温のせいで額から流れる汗を雑に手の甲で拭いながら言う。
高校最後の夏だしねと言うと、七緒もうんと頷く。
十代なんてあっというまだと世間は言うけれど、私にとっては奇妙に長く感じられた。
時々ふと自分の年を忘れそうになって思い出す時に、ああ私はまだ十八歳だったと不思議な気持ちになる。
だからこの夏が終わってもまた同じ夏が来て、七緒とも同じように笑っている気がする。
しかし来年からはもうそれがない。
私は他県の大学に行く予定だったし、七緒は高校卒業後、地元で就職する。
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