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「嫌味じゃないよ? 別にそのことで私が卑屈になってるわけでもないし」
「うん、わかってる。ありがとう、アンリ」
うち、こと、菱川家はこのあたりでは名士とされる家柄だ。
元は城主だたとかで、今でもうちのお祖父様は『殿様』と呼ばれていたりする。
私はそこの一人娘だけど、良いことなんて何もない。
無邪気に遊べたのは幼稚園までだった気がする。
小学生になると、明らかに媚びへつらうような態度を取られたり、さっきみたいに嫌味を言われたり。
その中で、私への態度を変えないアンリは特別だ。
「さて、移動教室だっけ?」
その声に「うん」と頷いて私も立ち上がった。
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