1 カバネの災難

3/9
61人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
俺の今回の雇われ先の街は、以前にも立ち寄ったことのある街だった。 ヤシンの手回しもあって、少し街外れの使われてない一軒家を借りて、そこを拠点に動いていた。 えーと、その、週の半分はヤシンと一緒に。 あいつ、仕事ちゃんと出来てるのかなぁ?まぁ、めちゃくちゃ、きっちりしっかりしてるから、心配なんていらないのだろうけど。 今日はヤシンが、どうしても仕事を抜けられないと言うので、俺もちゃんと勇者としてガッツリ魔物退治して(別にヤシンが来る日もちゃんと魔物退治してるけど)今は、街中の店で少しだけ酒を飲んでいた。 「あれ?もしかしてカバネか?」 声をかけられて、振り返ると、そこにはなんとなく見覚えのある顔が。うーん、誰だったかな?←仇討ち達成前の事は基本覚えてない 「なんだよ、忘れたのかよ?前に一緒に魔物退治に行っただろうが!」 馴れ馴れしく肩をバシバシ叩いて、当たり前のように隣の席に座ってきた。 「…………」 うーん、誰だっけ? それにしても馴れ馴れしいし、なんか距離がやけに近い気がする。 「ホントに分からないのか?ちぇっ、冷たい奴だな。それよりその腕どうした?」 「ん?これはちょっと油断しただけだ」 そう言って俺は、男から少しづつ離れた。 誰だか思い出せないけど、なんか嫌だ、すごく嫌だ。 「なんでお前、少しづつ離れていくんだよ!ムカつくな。っていうかさお前、しばらく見ないうちに、なんていうの?色気っていうの?可愛くなってね?」 そう言って男は、俺にピッタリと体を寄せてきて、さらに腰に手を回してきた。 ゾワゾワゾワゾワ 俺は手を払い除け、立ち上がり、酒代をテーブルに置いて、逃げるように外へ出た。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!