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俺の今回の雇われ先の街は、以前にも立ち寄ったことのある街だった。
ヤシンの手回しもあって、少し街外れの使われてない一軒家を借りて、そこを拠点に動いていた。
えーと、その、週の半分はヤシンと一緒に。
あいつ、仕事ちゃんと出来てるのかなぁ?まぁ、めちゃくちゃ、きっちりしっかりしてるから、心配なんていらないのだろうけど。
今日はヤシンが、どうしても仕事を抜けられないと言うので、俺もちゃんと勇者としてガッツリ魔物退治して(別にヤシンが来る日もちゃんと魔物退治してるけど)今は、街中の店で少しだけ酒を飲んでいた。
「あれ?もしかしてカバネか?」
声をかけられて、振り返ると、そこにはなんとなく見覚えのある顔が。うーん、誰だったかな?←仇討ち達成前の事は基本覚えてない
「なんだよ、忘れたのかよ?前に一緒に魔物退治に行っただろうが!」
馴れ馴れしく肩をバシバシ叩いて、当たり前のように隣の席に座ってきた。
「…………」
うーん、誰だっけ?
それにしても馴れ馴れしいし、なんか距離がやけに近い気がする。
「ホントに分からないのか?ちぇっ、冷たい奴だな。それよりその腕どうした?」
「ん?これはちょっと油断しただけだ」
そう言って俺は、男から少しづつ離れた。
誰だか思い出せないけど、なんか嫌だ、すごく嫌だ。
「なんでお前、少しづつ離れていくんだよ!ムカつくな。っていうかさお前、しばらく見ないうちに、なんていうの?色気っていうの?可愛くなってね?」
そう言って男は、俺にピッタリと体を寄せてきて、さらに腰に手を回してきた。
ゾワゾワゾワゾワ
俺は手を払い除け、立ち上がり、酒代をテーブルに置いて、逃げるように外へ出た。
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