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「また相手してくれよ、カバネ。じゃあな」
男はやるだけやって、俺をその場に捨て置いて去って行った。
俺はいつからこんなに非力になってしまったんだ…。
殴られて、押さえつけられて、何も出来なかった。ヤシンの時は、されてもいいとどこかで思ったから、本気で抵抗しなかった。
だけどさっきは、本気で抵抗しようとしても、それすらさせて貰えなかった。
術なく、なすがまま…。
「…とにかく今は、服を着ないと」
立ち上がろうとして、無理やり貫かれたそこに鋭い痛みと、中からドロリと流れ出てくる気持ちの悪い感覚に襲われた。
足にも力が入らず、上手く立ち上がれなかった。
「くそっ!情けない……」
俺は、馬の蹄の音がこちらに近づいて来るのを感じた。
こんな姿を見られる訳にはいかない!だけど、体が言うことを利かない。
蹄の音がすぐ近くで止まり、人が近づいて来るのが分かった。
「カバネさん!返事をして下さい!ここに居ますよね!カバネさん!」
俺を呼ぶ、聞き慣れたヤシンの声。珍しく慌てている感じのヤシンの声。
「な、んで、ここに」
「カバネさん!そこにいるんですね?すぐに行きますから!」
「やっ、嫌だっ!来るな!来ないでくれ、頼む!嫌だ!見られたくない!嫌だ!」
俺は見られたくなくて、必死に体を丸くした。
「ごめんなさいっ!来るの、遅くなって。ごめんなさい!僕、あなたを守れなかった…」
駆け寄ってきたヤシンは、小さく体を丸めた俺を抱きしめて、ひたすら謝罪の言葉を叫んでいた。
俺はその瞬間、一気に色々込み上げてきて、いい大人なのに、オッサンなのに、大泣きしてしまった…。
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