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ヤシンは俺が泣き止んで落ち着くまで、背中を優しくさすっていてくれた。そして、完全に落ち着いた頃に、持ってきた荷物の中からガウンを取り出して、俺の体に掛けた。
「服着るのしんどいでしょう?それ、羽織って下さい。僕はあなたの服や靴を回収してきますね」
俺は言われた通りに、ガウンに腕を通し、腰紐を縛った。
どこまで知っているのだろう?と言うより、確実に全てを知っている様子だ。
剣は部屋に置いてきた。あれ以外に俺の居場所や声を、ヤシンに流すようなもの…。
「どうしました?」
服や靴を回収してきたヤシンが、俺の顔を覗き込んで来た。
「…なんで、全部知っている?剣は部屋に置いてきたはず」
「さぁ?なんででしょうね?」
ヤシンはいつもの意地の悪い笑みを浮かべて続けた。
「それよりもカバネさん、さっきのような可愛い泣き顔は、僕の前でだけにして下さいね」
ヤシンは俺の前髪をかき上げて、おでこに軽く口付けた。
「なっ!なななななっ……」
俺は全身から湯気が出るような勢いで、顔と言わず、耳と言わず、首も、一気に朱に染めた。
それを見て、ヤシンはプッと吹き出した。
「そういう顔も、僕の前でだけにして下さいね」
そう言って、からかうように軽く口づけしてきた。
「じゃあ、家に戻りましょう。では、カバネさん、ちょっと失礼しますね」
「へっ?」
ヤシンは服や靴を入れたリュックを背負って、さらに肩掛けの鞄を斜め掛けして、最後に俺をお姫様抱っこした!
「お前、これ、どんな仕掛け!?なんで俺、お前にお姫様抱っこされてんだ?!」
「ちょっとキツいですけど、要はコツと愛情です」
にっこり微笑まれ、そう返されたけど…
やっぱりこいつ恐ろしい…。
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