1 カバネの災難

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俺は家に着くまでの間、ヤシンにしがみつき、馬に揺られながら、数週間前の事を思い出していた。 「はいカバネさん、今からピアス開けます!」 「え?ピアス開けるって、耳朶に穴を開けるってことか?その道具で?」 「はい。僕もほら、開けてきました。カバネさんは、この赤い石のをつけて下さいね」 そう言って、ヤシンは有無を言わさず、俺の体を押さえ付けて来た。 「ま、待て!どう考えても痛いだろう?それ!」 「大丈夫です!左腕切り落とされた時に比べれば、全然痛くないですよ」 「それとこれとは全然違うだろうが!」 それに、あの時は死ぬ気だったし、心臓貫かれると思ってたから、正直よく覚えていないし。 「勇者のくせに弱っちい事を言わない!」 耳にパチンっという音が響いた。 「……痛たたたっ」 穴を開けられたと思った途端に、なんだか酷く痛みを感じた。←ヘタレだから 「はい、反対側も」 「痛っ!痛たたたっ」 痛がる俺を無視して、ヤシンは手際よく、赤い石の付いたピアスを耳につけた。 「良く似合いますよ。カバネさんは赤が似合う。本当はお揃いが良かったんですけど、僕にはあまり赤は合わないので」 そう言って、自分の耳についた緑の石のピアスに触れた。 「カバネさん、何かあった時には、とにかく叫んで下さいね。そしたら、何があっても駆けつけますから」 あの時は、特になんとも思わなかったのだけど、えーと、もしかして、もしかすると、このピアスって、やっぱり…盗聴とか発信とか、そんな機能付きってことなのか…?? 嗚呼、俺のプライベートどこ行ったー!!
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