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家に着いてからも、ヤシンは手際良く、俺を風呂に入れ、体を洗い、あの男が俺の中に残したそれも、徹底的過ぎるほど徹底的に綺麗にした(途中なんか気持ちよくなってきてしまったが…)
その後も、みぞおちの殴られた場所には湿布を貼り、包帯を巻いて固定をし、無理やり裂かれたそこにも、軟膏を擦り込まれ、今はベッドに寝かされ、殴られた頬を氷嚢で冷やされている。
「だいぶ腫れてきましたね…。口の中も切れていたし、しばらくは優しい味のスープとか、柔らかいものを作りますね。あと、軟膏は渡しておきますから、痛い時に塗って下さい。僕が塗ってもいいんですけど、恥ずかしいでしょう?」
「言われなくとも、自分で塗る!」
俺は軟膏を奪い取った。
なんだろう…。
俺、あんなことされた後なのに、さっきまで情けなくて悔しくて、どうしようもなかったのに。ヤシンにも見られたくないとか思ってたのに。
「…大丈夫ですよ、カバネさん」
「え?」
「僕はこんなことであなたを嫌いにならないし、手放したりなんてしませんから」
不意打ちだ。
まさか今、そんな事を言われるとは思ってなかった。
ヤバい。めちゃくちゃ嬉しい。そしてなんか泣きそう。って俺!嬉しいとか泣きそうってなんだよ!どんだけこいつの事好きなんだよ、俺!
「おーい、カバネさーん、顔また真っ赤ですよー。口元ニヤけてますよー」
「そ、そんな事ない!」
「今の、嬉しかったですか?」
意地の悪い顔でヤシンは顔を覗き込んできた。
「うるさい!そ、それよりも仕事は大丈夫なのか?今日は来れないみたいなこと言ってたし…」
「えぇ、そこは僕ですからね、どうとでもしますよ。だけど、明日は朝からちょっと大事な仕事してくるので、カバネさん、ここで大人しく傷を癒していて下さいね」
ヤシンはそう言ってにっこりと微笑んだが、目は笑ってなくて、思わず土下座しそうなくらい恐ろしかった。これが恋人ってどうなんだろうなぁ…。
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