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Act 1
ふぁーあーあ!」
大きなあくびの声と背伸びをした姿が目に入った。
その横では、眠そうに、頭をボリボリかきぼさぼさの頭からは白い粉?がはらはらと落ちるのを、ふーっと吹いてる奴。
きったね―な、また何日風呂入ってないのよ?
横を通り過ぎる男からは、何とも鼻をつまみたくなるようなわけのわからない匂いがふわっとして“近寄るな”と、体が自然によけ、こっちに来るなというような目で見る。
この部署に配属になってからというもの、私の仕事は、お手伝いさん、家政婦というか、ここの母親(責任者)みたいになってしまっている。
トントンとドアをノックする音。
「ふぁわーい、どうぞ?」
とドアを引っ張った。
「stop!待って!開けるな!」
ギャーと言って、資料を投げ出し走っていく女性。
遅かったかー・・・
そこに立ち尽くす男・・・
「大樹君、何度言ったらわかるんですか?開けるときは何か羽織ってくださいって言いましたよね」
ブリーフ一枚の男性。
それもいい男で、体つきもいいのなら女は立ち止まり、ため息の一つでも着くのだろうが。
貧弱な体、黒縁のめがね、伸び放題の髪の毛と髭、パタパタと裏のはがれかけたスリッパ。
はー……
大きなため息と何かを着ろとあきれた言い方。
「あれ?着てたんだけどな」
「来てたのぬいだから裸なんでしょ、シャワーですか?今、彩人さんが使ってます」
「そうなの?ねえ、なんか食うのない?」
黙ったまま指さしたテーブルの上。
「ありがと」
小さいほうが朝用です、昼のは食べないでくださいね、薬も置いてあります。
「お母さんみたい、感謝します」
彼は手を合わせた。
「拝まれても私はなんにもできませんから」
そんなことないよ。
たたまれた白衣にそでを通し、いただきますと手を合わせて食べ始めた。
細身でやたら身長だけ高い彼は、ここに配属されて最初に目が付いた。
シャワー室から出てもかゆそうな頭、皮膚が薄いのか赤い顔、そして一番驚いたのが。
ドターンと大きな音に振り返った、廊下で・・・倒れている。
救急車を呼んで、一週間の入院。
「はあ?アレルギーですか?」
安易に見ないほうがいい、彼の場合、皮膚から食べ物からいろいろ制限しないといけない、ご家族は何をしていたのですかと言われた。
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