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One
「あ~~……セックスしてぇ」
卓麻理市は、だらしない自覚があった。
私生活云々、ではなく、性的欲求に関しての事だ。
遊び始めたのは、中学校3年生になった頃から。受験勉強や、親の期待、先生からの重圧に耐えかねて、羽目を外したことがキッカケだったと記憶している。
現在、大学2年生。このだらしない下半身は矯正されることなく、今でも自分の欲求に対して正直に反応していた。
「ちょっと、恋人の前で、そういうこと言うのやめようよ」
理市の放った唐突すぎる告白に、理市の目の前に座る彼は、頬を赤く染めながら咳払いをした。東雲弥太郎、理市の友人…いや、恋人である。
同じ大学のゼミに所属したことで知り合い、仲良くなった。最近は、理市の家に入り浸る事が多い。それから少しして、東雲の告白により、ふたりは恋人同士になった。
今日も、課題のレジュメを作成する為、小さな折りたたみ式のテーブルに、ぎゅうぎゅうになって資料を広げている。
「いーじゃん、ヤろうぜ、今から」
「今から?! ご、ごめん、僕、この後仕事が入ってるからさ……」
東雲の仕事、とは、主にアイドル活動か、雑誌などのモデルの仕事である。
彼は大学生でありながら、現在大人気沸騰中の男性アイドルグループ『4Winds』のリーダーもしている、超売れっ子だった。
4Windsは『女子中高生の憧れる、お兄さんアイドル』というモチーフらしく、現在現役大学生である4人が集まって結成されたそうだ。
メンバーやファンは、彼らを通称で呼び合う。
『リーダー東雲:Sino』
『サブリーダー南宮:Nan』
『西塔:Saa』
『北条:Pee』
特技や個性の溢れる4人の作り出す、爽やかで輝かしいオーラが、女子中高生だけではなく、その親世代にもヒットし、その人気は衰えることを知らない。
そんなアイドルグループや東雲と仲良くなった理市は、偶然に偶然が重なったのかもしれない。
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