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「西塔はあずかった……無傷で返して欲しくば、指定のホテルに一人で来い……?」
受信メールを読み、唇が震える。送信者は西塔本人であったが、違和感しかないその文面に、理市は眉を顰めた。
そのメールには写真も添付されており、そこにはロープで縛られ、目隠しと猿轡で顔の確かめようのない少年が写っていた。
この少年は……いや、青年だ。彼はおそらく、西塔である。
イタズラにしては手が込みすぎだ。確かに西塔はイタズラが好きだが、こんなに質の悪いイタズラはさすがにしないだろう。
「警察にばらしたり、多数で来た場合、西塔の命はない……」
とすると、これは西塔を誘拐した犯人からのメールということになる。完結で短いメールだったが、理市が行動を起こすための原動力としては十分だった。
西塔は、知り合って間もないが、すぐに気が合った。1歳差ではあるが、自分が年上ということもあり、色々な場所に遊びに連れて行っては、共に過ごす時間を楽しんだ。
明るく、人懐っこく、まるで弟ができたかのようで、理市は浮かれていた。
浮かれていて、忘れかけていた。
西塔が、超有名人で、大人気アイドルグループに所属していることを。
もしかしたら、遊びに連れて行った際に、目を付けられてしまったのかもしれない。
10代とはいえ、それなりに稼いでいることは世間も承知の上だ。
金銭目当てで誘拐されたのだろうか。
しかし、警察に話すことは不可能のようだ。
多数で来るのもダメ……。
東雲や、サブリーダーの南宮、北条に相談しようか、一瞬悩んだけれども……相談して、巻き込んで、もし傷でも負ったら、それこそ4Windsの活動はできなくなる。それに、北条に関しては、しばらく相手にしてくれないだろう。
「っざけんなよ、クソ……」
理市は急いでホテルの場所を検索し、そこに向けて走り出した。
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