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ナカがきゅううぅっと締まって、西塔が喜んでいるのがすぐに分かった。
でも反対に、アノニマスマスクの男は、そのマスクの下でひどくつまらなそうな眼をしていた。
理市が声を抑えているのが、面白くないのか。
それとも、西塔が喜んでいるのが面白くないのか……
「……目隠しを、取れ」
「ッ……!」
どうやら、後者のようだ。
理市は奥歯を噛み締めて、動きを止めた。
今、西塔が自分の顔をみて、自分を犯している相手が南宮でない、とわかってしまったら……
きっと、酷く傷付くだろう。
しかし、男の手には、まだナイフが握られており、光を反射させてキラリとこちらに存在をアピールしてくる。従わねば……刺されかねない。
理市は、恐る恐る西塔の目隠しに手を伸ばす。
一度、頭を撫でてやり、頬を包む様に添え、親指で目の下を撫でた。
そのまま目隠しを、ゆっくりと、
ゆっくり、と。
めくりあげると、西塔の猫目が眩しそうに、ぎゅっと閉じていて……涙で濡れた睫毛が、西塔の視界をぼやかす。
「あっ……」
と、声が漏れて、大きな猫目が更に大きく開いた。
その黒目に映るのは、悔しそうな顔をする理市だった。
「……り、ち…クン……う、そ…なん、でぇ……ッ!」」
信じられない、とショックを受けた西塔は、自身の口を両手で覆った。
本当に、南宮と勘違いしていたようで、意識も脳も混乱させてしまうクスリの恐ろしさを知る。
こんなモノを、無理矢理飲まされたのか、と理市もショックを受けた。
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