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それから数時間、理市と西塔はその部屋から出ることは許されなかった。
男はふたりに「大人しくしていろ」とだけ言い残し、出かけてしまったのだ。
理市の手首には手錠がかけられ、ベッドと繋がれている。
片手だけだが、不便極まりない。
一方、西塔には一切の拘束はなかった。
あのあと、体力を消耗し、意識を手放していた西塔を見て『こいつは私から逃げる事はできない。』と、アノニマスマスクが言った。
たしかに、服をすべて持ち去らわれてしまったので、互いに裸ではあるが、逃げられないわけではない。シーツなどで隠してしまえばいいのだ。
西塔が目を覚ましたら、彼だけでも逃がそう、と理市は隣で横たわる西塔を見て誓った。
*
どれくらい経っただろうか。やっと西塔が目を覚ました。
起きてくれたことに安心感を覚えながら、理市は西塔に言葉をかける。
「大丈夫か?」
ぼーっと天井を眺めていた西塔は、眼だけを動かして理市をみた。
泣きすぎて腫れぼったくみえる目元が痛々しい。
「……りーち、クン、ごめん、ね」
「ばーか、謝りたいのはこっちだっつーの。もっとかっこよく、助けてやりたかったんだけど。とにかく、あの男は外出中だ。逃げるなら今のうちだぞ」
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