One

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「あっそー、いいもん、西塔あたりに連絡してみるかー」 「Saaくん?」 「ああ、最近良く相手してくれんだよ」  スマホをタプタプと操作して、西塔の連絡先を表示させた。西塔は、暇つぶしに付き合ってくれたり、東雲に秘密で一緒に遊びに行く事もある。  軽快なリズムを刻むように動く指を、東雲が心配そうな目で追う。 「なんの、相手…? まさか、セックス、なんて言わないよね……?」 「さあねー」 「ちょっと、メンバーに手を出さないでって、あれほど!」  理市がスマホを耳に当てると、東雲は言葉を区切った。電話の邪魔になってはいけない、という配慮だろう。唇をぎゅっと噛みながら、色素の薄い綺麗な瞳を潤ませ、顔を赤く染めていく。 「まーまー、そんな怒んなって」 「お、怒るよぉ……」  スマホからは、プルルルル、と呼び出し音が暫く響いて……  数秒後、ガチャ、と電話に出たような音が聞こえた。 『はいにゃーん!』 「あ、さいと……」 『Saaちゃんは、ただいま電話に出られませーん。御用の方は、掛け直すか、発信音の後に伝言をちょうだいにゃーんっ』 「……自分で録音したタイプの留守電かよ、紛らわしいな!」  スマホをスワイプして電話を切ると、理市はため息をつきながら電話帳を漁る。  セックスの相手や、東雲の代わりを探しているわけではない。健全な暇つぶしが出来、東雲が嫉妬してくれるような相手を探していた。  今までが今までなので、他人には信じてもらえないが……東雲以外の人とセックスしたいと思わなくなったのだ。付き合い始めは、誰でもいいから相手してほしい、なんて欲求が収まらなかったけれど、今では本番行為を求めるのは東雲に対してのみである。  そんな風に誰か1人に絞るのは初めて、と言っても過言ではない。なんとなく、この大人気アイドル様を弄んではバチが当たるような気がしているのだ。
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