Two

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「ふふっ……理市クンってば、優しいにゃ」  西塔は、チカラなく笑った。 「オレっちが理市クンを置いていくわけないにゃ。もし逃げたら……理市クンが……」 「俺は大丈夫だから、逃げろ。そんで、南宮に連絡を取って、警察に……!」 「警察に行って、被害届でも出すのか?」  ふと、部屋の入口から聞こえた声に、ふたりは身体を強張らせた。  アノニマスマスクの男が、帰ってきていたのだ。  男は口角のあがったマスク越しに此方を見下ろしながら、理市に近づく。 「被害届なんて出したら、世間は大騒ぎになるだろうな。男とホテルに行き、呼び出された友人に犯されたアイドルなんて、軽蔑されて、非難の的になる。お前らを『カワイソウ』だと言う人間は一部だけだろう」 「いつまでこんなことするつもりだ? あんま長いこと監禁してると……それこそ世間が大騒ぎするぜ? 大人気アイドルグループのひとりが、行方不明ってな」 「問題ない」 理市の言葉に短く答えた男は、マスクの顎部を親指と人差し指で摘まみ、ゆっくり持ち上げる。 「このお遊びは、ここまでだ」 男はそう言いながら、マスクを外し、それを西塔に向かって投げた。 理市は、息をすることも忘れて、男の顔にくぎ付けになる。 その男は、理市もよく知る人だった。
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