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「は?!!」
止めていた息が、どっと肺に入ってくる。
外されたマスクの下には……見慣れた顔があったからだ。
「な、な、南宮?!」
マスクをつけていて乱れた髪をササっと手櫛で直しながら、その男は優しい微笑みを浮かべている。
「おや、ほんとに気づいていなかったんですね」
誘拐犯の正体に理市は驚きを隠せなかった。
西塔の恋人である男が……西塔を監禁していた犯人、だったなんて。
つまり?
つまり、どういうことなのだろうか?
理市は混乱する頭の中で、この数時間の事を順に思い出していく。
「なんで?! は、まさか、西塔は知ってて……?!」
バッと後ろを振り返ってみると、先ほど投げられたアノニマスマスクを顔にかぶせて遊んでいる西塔が、「にゃははー」と笑っている。
「楽しかったにゃ。Nanちゃんおつかれにゃー」
「まて、まて。まて。まじでどういうことなの? 一体なんなんだよ、お前ら!」
混乱を極める理市に、南宮が近寄り、その手錠を外した。
痛む手首をプラプラ振って、南宮を睨みつけると、彼は謝ることもなく澄ました顔でその手錠をベッドサイドに置く。
そして、クスクスを抑えきれない笑みを浮かべ、事の経緯を説明しだした。
「Saaが、監禁ごっこをしたいというから、私も本気で付き合ってあげました。最近は俳優の仕事も多く、色々な役を演じますが……悪役をやったことがなかったものですから。……それは、もう、楽しく演じさせていただきましたよ」
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