One

4/8
前へ
/25ページ
次へ
 4Windsの出す楽曲の作詞や作曲を担当する、北条。アイドルなだけあって、顔も良いし、歌声も抜群に良い。とろけるようなメルティーボイスに、イチコロにされる女性が急増、と雑誌で読んだ。  口数は少なく、一見クールだが、ギャップがあるとウケているらしい。いわゆるツンデレ系なのだろうか? そもそもデレることはあるのだろうか? 理市には分からないジャンルだ。 「はあ……Peeくんって、理市の事なんでキライなのかなぁ……」 「……ほぉ、本人の前で言わせるとは、Sinoも性格が悪くなったな」 「そ、そうじゃないよ! 少しでも、話をしたり、関わるキッカケができれば……仲良くなれるかと思って……」 「で、お前が仕事の間に、コイツをココに置いていくと?」 「ごめん……」と小さく呟きながら、東雲はうつむく。同時に、腕時計で時間を確認して、慌てて立ち上がった。どうやらタイムリミットのようだ。 「ほんとにゴメンね! Peeくん、よろしくね! 理市、浮気しないでよ!」 「心配すんなって。がんばれよー」  大きく手を振りながら、東雲はその場を去っていく。  「ここは託児所かっつーの」とため息交じりにつぶやく北条の声は、あえて聞こえないふりをした。 北条は、作詞作業をしていたようで、理市がそこに居ても全く気にせず、無言であった。 暇に耐えきれなくなった理市が、北条に「なあ」と声をかけちょっかいを出すと、彼はアイドルらしからぬ心底嫌な顔をして、理市を睨んだ。 「なんで北条って、Peeくんって言うのー?」 「……Saaに聞け」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加