One

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「西塔、連絡つかねーんだもん」 「…………」 「ねーねー」 「ああもう、なんだ、うるさい!」  やかましい理市の、子どもっぽい質問責めに耐えかねた北条が、作業を中断して紅茶に口をつけた。溜息のあとに、ずず……と啜る音が聞こえる。  理市は、なにがなんでも相手をしてやろうと意地だったのかもしれない。 「そういえば、できちゃったんだよ」 「なにがだ」 「赤ちゃん」  ブホォッ!! とすごい音が聞こえた。  面白半分で言った冗談に、北条が紅茶を噴きだしたのだ。げほげほ、と数回誤嚥をし、咳ばらいをしている。  彼の反応に、思った以上に動揺してることを悟った理市は、にんまりと口元を吊り上げた。 「な、なに、いま、なんて?!」 「東雲のぉー、赤ちゃんがー、できちゃったのー」 「おおおおおまえは! 男だろう?!」  わざとらしく、おなかを膨らませて……ぽんぽん、と2回たたくような撫でるような動作をすると、北条は先ほどまでのポーカーフェイスからは考えられないくらい顔を真っ赤にして、「うそ、だろ……」と、呟いた。どうやら、性に関する耐性がほぼないようだ。 「精液飲みまくると、男も妊娠するんだぜ?」 「う、うそだっ、うそ、そんなの……聞いたこと、ないッ!」 「え~、一般常識だろ? アイドル様は、こんなことも知らねぇの?」  耐性も知識もないヤツに、嘘を吐くのは簡単だった。  くっくっく、と喉で笑ってやる。北条は自身の口元を手で押さえて、混乱しているようだった。チームリーダーである東雲が、男を妊娠させた、なんて大ニュースになってしまうと恐れたのだろうか。
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