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「居たっ!」
乙女にしては大きすぎる声が、賑やかしい大通りに響き渡る。
叫んだ乙女は、栗色の髪をひらりと揺らして、最近リーデルガーデンで一番の流行であるアシメントリースカートを翻しながら、駆け抜けてきた。
人ごみの中で発見されてしまった小柄な影は「レイジェ……」と彼女の名前を呟き、肩をすくめる。
「瑠璃ちゃ~んっ!!」
巨人族の娘であるレイジェは、石畳の床を蹴り、小さな魔法使いにぎゅうっと抱き着いた。
「あああぁああ……!!」
五十センチ以上の身長差にしがみつかれ、瑠璃は悲鳴を上げた。
《いちばんきれいな青》
「い、いきなり抱き着いて、撫でまわすやつがあるかっ……ねこやドラゴンじゃないんだぞ……」
「んへへっ、でもだって会いたかったんだよ? 会えたのって運命的じゃない? どうどう?」
レイジェは興奮したように早口で言って、瑠璃のことを変わらずぎゅうぎゅうと抱きしめている。そしてさらに、彼女は先ほどよりもサイズが大きくなっていた。興奮すると、巨人族の力が抑えられないのだ。
レイジェに抱えられたままで、瑠璃はカフェに連れ込まれていた。
巨人族用の椅子に座ったレイジェは、瑠璃をぬいぐるみのようにだっこしたままだ。ぎゅうぎゅうするたびに、瑠璃は古びたローブを揺らして「こら! らんぼう!」と彼女の手の甲を杖で叩いた。
「乱暴かな~会えてうれしいってだけなんだけれど」
レイジェは唇を尖らせながら、瑠璃を自身の膝の上に置く。
瑠璃はため息をついて、ローブのフードを下ろした。首元で切り揃えられた黒の髪を、レイジェは指で梳かす。
「会えてうれしいって言ったって、ほとんど初対面だろう。なにが嬉しいんだね……」
「だってだって、瑠璃ちゃんってば、二回目なのに初めてな気もしないし! 逢えたら、こんなに嬉しいってことは、瑠璃ちゃんは特別なんだよ~」
レイジェはにこにことしながら言って、目をきらきらとさせた。瑠璃はその様子にまたため息をつき「落ち着け」と、杖で彼女をぽかんと叩く。打撃には力がないが、魔力のせいで、レイジェの身体はするすると小さくなった。
「瑠璃ちゃんと変わらないサイズになっちゃった」
「それでもわたしより大きいだろう。あと瑠璃ちゃんってのはやめろ。こちとら、五百年は生きてるんだ」
「えっめちゃくちゃ年上だったんだ! ぜんぜんわかんないよ~すごい!」
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