第二話 青馬(ハルマ)

1/119
49人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ

第二話 青馬(ハルマ)

ジャキン。 「あ。 ……?……――いっ!?」 『――う、うぇ? おぁお、…………ふげげげげ――――っっっ!』 カットクロスの表面をためらうことなく滑り降り、床下にパラパラと散らばる髪……。 市原青馬(はるま)は一連の残像を追っかけ再生するがごとく、落ちた髪がもともとあった位置(いちおうは客である彼女の側頭部)と、現在位置(床下)までを目で追った。 幻覚じゃない。見事なまでにバッサリいってしまっている。 ヤバイ。ヤバイなんてもんじゃない。ヤバ過ぎて30秒後には死亡確定――。 古材を使って自作したドレッサーに映る、ワナワナと肩をふるわせ、いまにも斬りかかってきそうな女性客の顔を、空笑いを浮かべうかがう。 「……な、南青(なお)ちゃん。……あの……、落ち着いて?(テヘペロ)えへへへ。 ごめ、……ちょ、ちょっとラジオのアレにビックリしちゃってつい手がさ(汗) ――で、でもでも! 大丈夫だから! 何とかなるからっ!  こう見えて俺、かなりの売れっ子じゃん!? ファッション誌とか、ショーとか、あっちこちからお呼びがかかる若手実力派じゃん!?  取材はNGだけど。だから安心して――」 「…………何が(ドスのきいた低い声で)……どう……大丈夫なんじゃぁぁぁっっっ! この……腐れホモがぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!