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第二話 青馬(ハルマ)
ジャキン。
「あ。
……?……――いっ!?」
『――う、うぇ? おぁお、…………ふげげげげ――――っっっ!』
カットクロスの表面をためらうことなく滑り降り、床下にパラパラと散らばる髪……。
市原青馬は一連の残像を追っかけ再生するがごとく、落ちた髪がもともとあった位置(いちおうは客である彼女の側頭部)と、現在位置(床下)までを目で追った。
幻覚じゃない。見事なまでにバッサリいってしまっている。
ヤバイ。ヤバイなんてもんじゃない。ヤバ過ぎて30秒後には死亡確定――。
古材を使って自作したドレッサーに映る、ワナワナと肩をふるわせ、いまにも斬りかかってきそうな女性客の顔を、空笑いを浮かべうかがう。
「……な、南青ちゃん。……あの……、落ち着いて?(テヘペロ)えへへへ。
ごめ、……ちょ、ちょっとラジオのアレにビックリしちゃってつい手がさ(汗)
――で、でもでも! 大丈夫だから! 何とかなるからっ!
こう見えて俺、かなりの売れっ子じゃん!?
ファッション誌とか、ショーとか、あっちこちからお呼びがかかる若手実力派じゃん!? 取材はNGだけど。だから安心して――」
「…………何が(ドスのきいた低い声で)……どう……大丈夫なんじゃぁぁぁっっっ! この……腐れホモがぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」
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