ラムネとガラス玉と彼女の瞳

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 *** 「あれ、あいつらどこ行った?」  中学生のとき、友人と三人で隣町の公園で開催された夏祭りへと出かけたことがあった。が、屋台を眺めているうちにいつのまにか友人とはぐれてしまった。  幸い僕も友達も携帯を持っていたからすぐに電話をかけてみたが、祭りの喧騒で着信音が聞こえないのか友達が出ることはなく、仕方なくメールを送った。  僕がいないことに気付けば携帯を取り出すだろうし、そう待つことなく返信は来るだろう。それまで一人で屋台を巡ろうかと考えたが、同じように着信音に気付かなかったら意味がないので静かな場所に移動することにした。  いくつかある公園の入り口のうち、一番近い場所を選んで向かった。手頃な大きさの石に腰をかけ、先に買っていたラムネの栓を開ける。ガラス玉が沈んだ直後せり上がって来る炭酸の泡をこぼさないよう、素早く口をつけて飲みはじめる。  喉がかわいていたから、すぐに飲み干した。意味もなくビンを振ってみると、中のガラス玉がカラコロと音をたてた。小さい頃は親に中のガラス玉を取り出してもらって集めていたっけ、と思い取り出してみる。  ビンに取り付けられたプラスチックの飲み口は少し固かったが外すことができ、傾けたビンから透明無色のガラス玉が出てきた。親指と人差し指でつまんでかざしてみる。すこし離れた先にある屋台とそれを巡る人々がガラス玉の中に閉じ込められる。  そういった光景をうっとりと眺めるほどロマンチックな性格ではないけれど、ただの暇つぶしとして僕はしばらくガラス玉の中の世界を眺めていた。  突然、ガラス玉の色が変わった。  正確には、ガラス玉と景色の間になにか青いものが介入してきた。  ガラス玉を持っていた手をおろす。目の前に立っていたのは、自分と同じくらいの年だと思われる金髪に青い目の女の子だった。  僕は息をのむ。白いワンピースを着て不思議そうに覗き込む彼女は美しかった。  持っていたガラス玉をラムネのビンに戻しながらも、視線は彼女から逸らすことができなかった。
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