雨空に歌う

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買ってからたった1週間、私にとって限りなく長かったその期間がやっと終わりを告げた。 朝に差し込む陽に目を焼かれることもなく、天気予報で肩を落とすこともない! 待ちに待った雨、いつもより少しだけ早くに家を出ていつもの待ち合わせ場所に向かった。 普段なら憂鬱な重い空気も、足元で待ち構える水たまりも。 今日の私には関係ない。 いつもより早くに家を出たので待ち合わせ場所には私が先についた。 いつも先に着いている彼がいないのでだいぶ早く着いてしまったかもしれない。時計は待ち合わせの時間の10分前を指していた。 暇を持て余した私は新品の傘を見せつけるように肩の上でくるくると回した。露先から雨粒が四方に跳ねる。 濃い青に内側が薄い水色になっていて、水に濡れて浮かび上がる模様が入道雲に見えた。色のコントラストが終わりかけの夏の空に見えて思わず目をひかれる。それがこれを選んだ決め手でもあった。 彼ならなんて言ってくれる?きっとまずは私が先にいることに驚くはず。そうしたら次は?私が上機嫌なのを見て不思議に思うのかな。たかが傘1つで浮かれているのを見抜かれるのはどこか恥ずかしくて私は傘を回す手を止めた。
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