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HD189733bの瞳
HD189733bという惑星を知っているだろうか。地球から63光年離れた、木星ほどの大きさの、地球によく似た綺麗な青色の惑星だ。まぁ、母なる海を思わせる鮮やかな色彩と違って、表面温度は1000度、時速9000㎞の暴風が吹き、硝子の雨が降り注ぐ、地獄の鬼も金棒を投げ出して逃げる環境だけども。
その惑星そのものの特徴を軽く挙げるのならばそのような説明になるだろう。しかし、人間からしたらもうひとつ親しみぶかい特徴がある。その惑星は、地球以外の惑星で初めて地図を作られたのだ。地図といっても、多くの人間が想像するようなものでなく、データ処理によって作られた表面上の温度分布ではあるが。何はともあれ浪漫の滾る話だ。
ともかく、俺はその惑星が好きだった。なぜ、と問われると答えに窮するが、初めて知った日から、その鮮麗な青色、だが過酷な環境、太陽系外に有りながらも人類が想像図でなく本物の地図を作れたこと。そのようなことだけで、俺の心を打つには十分だった。
人間からしたら遥か遠くの、しかし燦然と輝くその星にどうしようもなく心惹かれていたのだ。
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